愛増す

シャニマスに関する雑文

天井努とルカ(仮)

  • 努とルカには面識があった?

 モノローグ・ダイアローグでのナポリタン会食時に努とルカが互いの事を知っていたのは、普通に考えると以前に面識があったからだ。ルカの「よく耐えられるね。誰と飯食ってんだよ?」の台詞からも、ルカは努が自分の素性を把握していると認識している。しかしここは一度あえて互いに面識がなかった可能性を考えてみたいと思う。

 

 ルカがかつては敏腕Pだった努の事を知りえる手段はいろいろあるだろう。だが逆に努がルカの事を知りえる状況は限られる。ルカが八雲なみの娘だったとしても、今の所それを公言している様子はないし、風の噂で努がそれを知るというのも考えにくい。では直接八雲なみ本人か、なみとルカに近しい人物から教えられたという可能性はある。

もし八雲なみの本名が「斑鳩」だとしてもそれだけでルカがなみの娘だとは限らない。だがルカが母親の面影を有しているとするなら、なみの本名である「斑鳩」を名乗ってアイドルをやれば、当然努の目に留まるはずだ。そうすれば努はルカの素性を調べるだろう。話としてはその方が面白いが、あまりにルカがなみに似ていると他の人間からも気づかれるかもしれないので、似ているといってたもあくまで「面影がある」くらいだと思う。

 

 とりあえず互いに面識はないが互いの事は認識していたとする。ナポリタン会食時に努があの店にいたのが本当に偶然だったのかはさておき、顔を合わせて一緒に飯を食う事になった経緯は作中で描かれていない。誘うなら努の方から誘う感じはあるが、本来面識のない無関係の他人、店で騒がしくした客を食事に同席させる行為は普通ではない。にも拘わらず努がルカを誘ったのなら、この時点でルカは努が「自分の事を知っている」と気付いたに違いない。誘ったのがルカからの場合でもそれは同じ。

 そう考えると例え初対面でも、互いの事を知っていれば、店で対面後に同席し「よく耐えれるね。誰と飯食ってるんだよ」という会話に繋げるのも破綻していないと思われる。

 

 そもそも面識があったと考えると、何故面識があったのかという疑問が沸く。ルカの方から会いに行ったのか、努の方から会いに行ったのか。いつ、どこで、何のためにと考えると、様々なコミュが妄想できる余地があるが。

 例えば努が283プロを立ち上げ、再びアイドル界に戻ろうとしているのを知ったルカがそれを許せない気持ちから会いに行ったとか。それで自分の過去の過ちを振り返って歩みを止めるべきかという迷いを抱いた努の前に、かつての親友の面影のある人物が面接に来たとしたら…とか。

 

  • 努とルカのやり取りを振り返る

店での対面時の二人の会話

ルカ よく耐えられるね、アンタ
ルカ 誰と食ってるんだよ
アハッ、誰と食ってるんだよオイ……?
社長 口のものを飲みこんでから話すといい

 

まずルカが努に仕掛ける。ルカと努の関係は明らかにされてはいないが、本来二人の関係は同じテーブルで飯を食べるような関係ではないらしい。

ルカは努に対し一物ある事を露わにしたが、それに対し食事のマナーを注意する事で、努は応えずスルーする。

 

ルカ まずいね、このナポリタン……最悪な味がする
社長 ……シェフを呼ぼうか
ルカ ……あ? アンタまずいと思わねぇの?
────アハハッ
ルカ オンチだね、283の社長さんはやっぱ

 

努にスルーされたルカは次にナポリタンが不味いと言う。説明するまでも無いが、たとえルカがナポリタンに対し一家言持っていたとしても、実際にナポリタンの味が最悪というわけではなく、努と同席して食べているから味が最悪に感じるという皮肉である。

その皮肉に対し努はまたもスルー。むしろ皮肉として受取らずに返すという高等テクを披露する。努はルカがシェフを呼べと返すとは思っていないし、実際に呼ぶつもりもないだろうから。

そんな努の態度に対しルカはとうとう彼に直接「オンチ」だと言い放つ。これは会話の流れから表面上は「味音痴」という意味になり、これだけでも失礼だが、遠回しに「ある感覚が鈍い、不得意である」という意味をこめた皮肉でもある。それは倒置法で「やっぱ」と言ってる事からもわかる。283社長が「オンチ」であるとルカに思わせる事が以前にもあったと言っているからだ。それはもちろん料理の味覚がわからない出来事があったわけではないだろう。まあこの会話の流れ自体を指して努に「オンチ」と言っているとも取れるが。

 

社長 ──
料理の味を損ねているのは誰かね

 

直接失礼な言葉を向けて来たルカに対し、努もついに皮肉で返す。「料理を不味く感じるのは自分自身の問題だろう」と。

 

ルカ …………アンタらがやったことだろ?
にちか&美琴 『1、2、3、4────!』
ルカ アンタらが……!
全部全部全部………………
ルカ 全部全部……まずくしたんだろ………………!
自分らだけ幸せごっこやってんじゃねェよ…………!

 

努の言葉にルカは感情を露わにして反論する。「アンタら」と複数系なのはその台詞の後ににちか&美琴の台詞があるので、努だけでなくにちかと美琴の事も指しているかと思われるが。

(「幸せごっこ」という指摘はなかなか。努は283プロで「家族ごっこ」をしようとしているフシがあるからだ。)

 

社長 …………
社長 ……ふしあわせなのか
あの人は
ルカ ──────っ

 

「自分らだけ幸せごっこやってんじゃねェよ」とは逆に言えば「私は不幸なのに」という意味だ。だが努は「お前は不幸せなのか?」ではなく「あの人は不幸なのか?」とルカに尋ねた。それはルカの台詞に含まれる「努への恨み節」を努が感じ取ったからであり、努はルカに恨まれる覚えがあるという事である。

そして「あの人」とは、ルカがその後想像した人物「ルカの母」だろう。努がルカの母の状況についてどれくらい把握しているのかは不明なので、純粋に疑問として訊いたとも思えるが、「あの人は不幸せではないはずだ」という意味で言っているかもしれない。

 

ルカの母 ふふふっ……
ルカ ────────ふし……
ルカ ………………っけんな………………!
ルカ アンタにそれ聞く資格はねぇよ…………ッ

 

努に「あの人は不幸せなのか?」と問われたルカが思い出したのは笑う母の姿。ルカは「ふし…」と何か言いかけたが、結局質問には答えなかった。

ルカにとって笑う母の姿はどう映っていたのだろうか? 努の質問に対して、母の笑顔を思い出したとしたら、ルカ母は自分の事を不幸だと思っている様子はなかったという事になる。母の笑顔が幸せの証だとしたら、ルカはそれを否定するわけにはいかないだろう。だから「――ふし(あわせなんかじゃない)」と答えようとしたが、(ルカ母が八雲なみだとして)人気アイドルだった彼女を早期引退に追い込んだ(と思っている)努へのジレンマがそう答えるのを止めさせたのであろう。

努が八雲なみを引退に追い込んだと思っているであろうルカからすれば「彼女はふしあわせなのか?」と訊いてくる努に対し「どの口が言ってやがる」と感じるだろうし、「聞く資格はない」と返したくもなるだろう。努ももちろんすっとぼけているわけではなく、八雲なみ引退の出来事は毎年クリスマスに亡霊がやってくるくらいには後悔して引きずっているし、責任が自分にあると感じている。それを踏まえて何故こういうやりとりになったのか考えてみたい。

 

  • 努のルカへの態度とその理由

努は八雲なみ引退の件を後悔している。だとすれば彼女への負い目があってもおかしくはないし、その娘であるルカにも負い目を感じてもおかしくはないだろう。だが店でのやり取りだけを見るとルカに対して負い目を感じている様子は見受けられない。しかしルカのSNSをチェックしている事からも努がルカの事を気にかけているのは確かである。店で声をかけて一緒に飯を食べる事にしたのもルカや彼女の母の事が気がかりだからだろう。

努は今も八雲なみやその娘の事を気にかけている。けれど娘に対し負い目は見せない。そして八雲なみが今ふしあわせだとも思っていない。

 

それは「八雲なみはアイドルを引退したが、その結果として斑鳩ルカが生まれた」からだ。確かに努は結果的に彼女の夢を奪ってしまい、そのことを後悔し続けている。けれどその過去の過ちの結果として、その後のなみはルカという子を産んだ。それはもちろん「自分の過ちのおかげでルカが生まれて、なみは今幸せに生きている」と傲慢に考えているからではない。

自分のプロデュース方針によって彼女を引退に追い込んでしまったとしても、引退を選んだのは彼女自身の選択だ。努は自分の過ちを反省し後悔はしても、彼女自身が選んだ道を尊重したかったのではないかと思う。そもそも「アイドルを引退するという選択をした彼女のこれからの人生は不幸である」と決めつける事の方が傲慢だろう。

だから努はルカの前では悪びれない。自分の過ちを後悔はしても八雲なみの選択を否定はしない。それはなみの今の幸せとルカという存在を否定する事になるから。ルカという存在は努にとって唯一の救いだったのではないかと私は感じている。矛盾と紙一重の感情を努は彼女達に抱いているのだ。知らんけど